小説の雰囲気が好きだ。
本を開いて、最初の数ページを読み始める。登場人物が出てきて、少しずつ物語が動き始めると、いつの間にかその世界に入り込んでいる。
部屋にいるはずなのに、気持ちはそこにはない。
ページをめくる音だけがかすかに聞こえて、周りの光や生活の音が少しずつ遠くなっていく。さっきまで気になっていたことも、今やらなければいけないことも、しばらくの間は頭の隅へ追いやられている。
気づけば、自分が本を読んでいるという感覚さえ薄くなっている。
ただ物語の中にいる。
登場人物と一緒に歩いたり、悩んだり、笑ったりしながら、その世界を眺めている。
小説だから味わえる、別の世界
小説って、不思議なものだと思う。
映画のように映像があるわけでもない。音楽が流れてくるわけでもない。それなのに、文章を読み進めていると、自分の頭の中には景色が浮かんでくる。
どんな場所なのか。
どんな表情をしているのか。
その場にはどんな空気が流れているのか。
書かれている言葉を頼りに、自分の中で世界が少しずつ形になっていく。
そして、その世界に入り込んでいる間だけ、普段の自分から少し離れられる。
仕事のことや日々の小さな悩みも、一度横に置いておける。何かを解決するわけではないけれど、それだけで気持ちが少し軽くなることがある。
しばらくして本を閉じると、またいつもの部屋に戻ってくる。
時計を見て、「こんなに時間が経っていたのか」と驚くこともある。
でも、その時間がなんだか心地いい。
現実とは違う場所へ行って、また戻ってくる。
そんな時間を作れるから、やっぱり小説は好きだなぁと思う。


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