寒い日になると、自然と足が向かっていた場所がある。それが図書館だった。外は冷たい風が吹いていて、手もかじかむような日でも、図書館の扉を開けた瞬間に、ふわっとあたたかい空気に包まれる。その感じが、なんだかほっとして好きだった。
特別な用事がなくてもいい。ただ寒さから逃げるように入って、コートを脱いで、静かな空間に身を置くだけで、気持ちが落ち着いていく。館内は静かで、足音も小さくて、ページをめくる音だけがときどき聞こえる。その静けさが、寒い日にはちょうどよかった。
本の匂いも好きだった。書店の、新しい本が並ぶあの少しインクっぽい匂いもいいけれど、図書館の本の匂いはまた違う。たくさんの人に読まれて、時間を重ねてきた紙の匂い。少しだけ古くて、でも安心するような香りがする。
棚の前に立って、背表紙を眺めながら、どれを読もうか迷う時間も楽しい。知らないタイトル、知らない世界。でも手に取ってページを開くと、すぐに引き込まれてしまう。本の内容そのものが、やっぱり面白い。静かな場所で、物語や知識に集中できる時間は、寒さも時間も忘れさせてくれる。
窓の外を見ると、曇った空や、時には雪がちらついていることもあった。そんな景色を横目に、本を読みながら過ごす午後は、とても贅沢だったと思う。何かを頑張らなくてもいい、ただそこにいるだけで満たされる時間。
寒い日は、あったかい図書館へ。今思うと、体だけじゃなく、心も温めてもらっていたのかもしれない。



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