冬になると、自然と聴きたくなる音楽がある。理由ははっきりしていないけれど、寒い空気や、少し早く暗くなる夕方のせいで、心が静かな方へ向かうからなのかもしれない。
そんな冬によく聴いていたのが、池田綾子さんの「祈りの歌」だった。音量を小さめにして、部屋の明かりも少し落として、ただ流しているだけなのに、空気がゆっくりと変わっていく感じがする。言葉はやさしくて、旋律は静かで、聴いていると自然と切ない気持ちになる。でも、不思議と嫌じゃない。その切なさが、冬にはちょうどいい。
窓の外では、風が鳴ったり、遠くで車の音がしたりする。そんな日常の音と、音楽が混ざり合う時間が好きだった。特別なことは何もしていないのに、心の中だけは少し遠い場所に行っているような感覚になる。
その曲を流しながら、勝手にオリジナルの物語を頭の中で考えることもよくあった。誰かが静かに歩いている場面だったり、雪の降る町で再会するシーンだったり。言葉にするほどちゃんとした話じゃないけれど、音楽をBGMにすると、頭の中の映像が自然に流れ出してくる。
冬の夜は、外に出なくても、そんな小さな旅ができる。あたたかい飲み物を用意して、椅子に深く座って、ただ音楽に身を任せる。それだけで、少し心が整う気がする。
今でも冬になると、ふと思い出して再生する。あの頃と同じように、静かで、少し切なくて、でもやさしい時間が、また部屋に流れ出す。冬に聴きたくなる音楽は、きっとその季節の気持ちごと、覚えているんだと思う。



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