冬のバスに包まれて思い出す、あの帰り道のぬくもり

日記

この時期になると、バスに乗るたびにほっとした気持ちになる。外の空気は少しずつ冬の匂いをまとって冷たくなってきているのに、バスの中だけはぽかぽかとした優しい世界が広がっている。暖房の効いたあの空気に包まれると、なんだか昔の記憶までふんわり温められるような気がする。

特に思い出すのは、高校の帰り道のバスだ。いつも利用していた便が始発だったから、ほとんど必ず席に座れた。部活動でくたくたになった日も、テスト前で眠気と戦っていた日も、席に腰掛けた瞬間に「ようやく休める…」と小さく息をついたのを覚えている。

暖房の温度もちょうどよくて、外は夕暮れで冷たいのに、バスの中は春みたいに柔らかい。あのギャップがまた心地よかった。ふと窓に頭を預けると、揺れに合わせてまぶたがすーっと重くなり、そのまま眠りに落ちてしまうこともしょっちゅうだった。

目を閉じると、バスのエンジンの振動がまるで子守歌のように響いてくる。車内アナウンスの音も遠くに感じて、気づけば最寄りのひとつ手前くらいでぼんやり目が覚める。あの“寝すぎないちょうどよさ”まで含めて、すべてが心地よかった。

今思うと、あの時間ってすごく贅沢だったなと思う。ただ座って、ぬくぬくして、揺られているだけなのに、一日の疲れが丸ごと溶けていくみたいで。日々が早く過ぎていく大人の今だからこそ、あの静かで暖かい帰り道を時々恋しく思う。

最近ではバスに乗る機会も減ってしまったけれど、この季節になるとあの頃の温かさをふと思い出す。たまには少し遠回りして、久しぶりにバスに揺られてみるのもいいかもしれない。あの時と同じように眠くなるかは分からないけれど、きっとあの頃と同じ、優しい時間が流れている気がする。

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