子どものころから、グミが好きだった。駄菓子屋に行って、10円玉を何枚か握りしめて、どれを買おうか迷う時間が楽しかった。少し硬めで、かじると歯にくっつくようなあの感じ。あれが“グミ”だと思っていた。
それが、大人になってからスーパーの棚でふと見つけたとき、驚いた。見たことのない種類のグミがずらりと並んでいて、「え、こんなにあるの?」と立ち止まってしまった。果汁入り、コラーゲン配合、ふわふわ食感――どれもパッケージがきらきらしていて、ちょっとしたお菓子の世界みたいだった。
試しにいくつか買って帰って、夜、仕事のあとに食べてみた。ひとつ口に入れた瞬間、「あ、柔らかい…!」とちょっと感動した。昔食べていたのは“噛みごたえ”だったけど、今のグミは“癒し”みたいなやさしさがある。噛むたびにほのかな果物の香りが広がって、なんだか気持ちがほっとする。
最近は、冷蔵庫で少し冷やして食べるのがマイブーム。冷たくて、でも中はもちっとしていて、ちょっとしたご褒美みたい。疲れた日なんかは、コーヒーと一緒に食べると、心までやわらかくなる気がする。
あの頃、駄菓子屋で食べていたグミは、友達と分け合う楽しさだった。今食べているグミは、自分をちょっといたわる時間。同じ「グミ」なのに、こんなに感じ方が変わるなんて不思議だなぁと思う。
大人になると、こういう“ささやかな好き”が心の支えになる。派手じゃなくても、日常に小さな幸せをくれる存在。今日もスーパーのお菓子コーナーを通ると、つい足を止めてしまう。どんな味に出会えるかな――そんな小さな楽しみを胸に、ひとつだけ袋を選んで帰る。



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