ホワイトデーだけど、特別じゃない夜。
帰り道、コンビニの入り口に白いパッケージのお菓子が並んでいる。「ホワイトデー」の文字を見て、ああ、今日はそうだったな、と思い出す。
今年は、特別な予定もない。レストランの予約もなければ、サプライズもない。
でも、それでいい。
昼間、職場でちょっとしたお返しを渡した。小さな焼き菓子と、「いつもありがとう」の一言。
相手がふっと笑ってくれた瞬間、なんだかそれだけで十分だった。
“3倍返し”なんて言葉もあったね
昔は、「3倍返し」なんて言葉があった。お返しは豪華に、とか。ちゃんとしなきゃ、とか。
周りだけのルールみたいなものに、少し振り回されていた気もする。
でも今は、気持ちがちゃんと乗っていれば、それでいいと思う。
家に帰って、コートを脱いでソファに座る。テレビから流れるバラエティ番組の音が、いつも通りの夜をつくる。
特別じゃない。キラキラもしていない。
でも、悪くない。
お返しを選ぶ時間は楽しかった。「これ、好きかな」と考える時間は、ちょっとやさしい。
それだけで、十分意味がある。
イベントの日も、結局はいつもの延長線上。
マグカップにお湯を注ぎながら、今日も静かに一日が終わっていく。
特別じゃないホワイトデー。でも、ちゃんとあたたかい夜。


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