冬のバスや電車には、少し特別な空気が流れている気がする。外は冷たい風が吹いていて、コートの襟を立てながら乗り込むのに、扉が閉まった瞬間、ふわっとあったかい空気に包まれる。そのギャップだけで、なんだか安心してしまう。
朝の通勤時間。窓の外は白っぽく、息を吐くたびに冬を感じるのに、車内は静かで穏やかだ。暖房の効いた空気が、じわじわと体に広がっていく。手袋を外して、つり革を握ると、「ああ、ちゃんと温かいな」と思う。
座席に座れると、なおさら危険だ。揺れが一定で、エンジン音やレールの音が、子守唄みたいに響いてくる。周りを見渡すと、うつむいて目を閉じている人がちらほらいて、「みんな同じ気持ちなんだろうな」と、勝手に仲間意識が芽生える。
つい、ウトウトしてしまう。完全に眠るわけじゃないけれど、意識が少し遠くにいく感じ。頭の中がぼんやりして、考え事も溶けていく。その短い時間が、妙に心地いい。
降りる駅が近づいて、アナウンスが流れると、少し名残惜しくなる。あのあったかさと、ゆるやかな揺れの中に、もう少しだけいたい気持ちになる。でも、ドアが開いて冷たい空気に触れると、不思議とシャキッとする。
冬のバスや電車は、ただの移動手段じゃなくて、日常の中の小さな休憩所みたいだ。今日もまた、あのあったかい空気に助けられながら、一日を進んでいく。



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