雪が降る地域で育ったせいか、冬になると思い出す景色がたくさんある。特に、学校の帰り道に友だちとやっていた“あの遊び”。木の枝にふわっと積もった雪を、下から雪玉で落とす遊びだ。
放課後の薄暗い道、白い息を弾ませながら、狙いを定めて雪玉を投げる。でも、これがまあ、当たらない。当たらないからこそ、当たったときの「ドスン!」という落ちる音が、妙に心地よかった。落ちた瞬間の、あの重たい雪の響き。なんだか自分の中の寒さを一気に吹き飛ばしてくれるような気がしていた。
今思えば、ただ雪を落とすだけなのに、どうしてあんなに楽しかったんだろう。信じられないくらい単純な遊びなのに、放課後の時間をまるごと費やしてしまうくらい夢中になっていた。
最近はそんな遊びをすることもなくなったけれど、冬になると道の木々を見上げてしまう。子どもの頃の自分が、まだそこにいるような気がして。うまく投げられなくて悔しがっていたあの頃の自分に、「まあまあ、また明日練習すればいいじゃん」なんて言いたくなる。
大人になると、雪ってただ寒くて、交通に支障をきたす厄介な存在になりがちだけど、それでも心のどこかで“あのドスン”を探してしまう。雪が積もった木を見ると、ふと手の中に雪玉の感触を思い出して、「ちょっと投げてみようかな」なんて気持ちがわいてくる。
冬はどこか静かで寂しい季節だけれど、こういう小さな思い出が心をあたためてくれる。あの頃の“うまくいかなくて悔しい”ですら、今ではなんだか愛おしい。雪が降る日には、少しだけ子どもの自分に会える気がする。



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