朝、コーヒーを一口飲んでから外に出ると、少し冷たい空気が頬に触れた。その瞬間、ふと昔の面接のことを思い出した。「あぁ、あの頃は面接が本当に嫌だったなぁ」と、自然とため息がこぼれる。
特に覚えているのは、スーパーの面接に行ったときのこと。入口の自動ドアが開いた瞬間、ほのかに漂う野菜の匂いと、忙しそうに動くスタッフさんたちの姿が目に入り、急に緊張がぐっと高まった。最終選考まで進んだからこそ、期待と不安が入り混じって、心臓の音がやたらと大きく聞こえたのを覚えている。
たぶん、あの時の私は、言葉を選びすぎてたのかもしれない。面接室の椅子に座ると、背筋がつっぱったままで、自然に笑えなくて。「頑張らなきゃ」と思えば思うほど、うまく言葉が出てこなかった。結果は……残念ながら不合格だった。
家に帰るバスの中で、窓の外の流れる景色をぼんやり眺めながら、ずっと胸のあたりが重かった。夕方の赤い空がやけに静かで、なんだか自分だけ置いていかれた気がしたのを覚えている。
でも、時間が経って振り返れば、不思議と「あれでよかったのかもしれない」と思える。そのあと受けた別のところで、ちゃんと自分を受け入れてくれる場所に出会えたから。そこには気の合う人がいて、笑い合える瞬間があって、あの日の不合格は、ゆるやかにその道へ導いてくれたのかもしれない。
今なら思う。たとえうまくいかなくても、あとから「あれがあったから今がある」と言えることって、けっこう多い。そう考えると、面接で震えていた昔の自分にも、少しだけ優しくなれる気がする。
今日みたいな静かな午後、そんなことをふと思い出して、少しだけ胸があたたかくなった。



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