「バミューダトライアングル」って知ってますか?三角形の海域で、船や飛行機が突然消える――そんな話を、昔のテレビで見たことがある。確か、夜の特番だったと思う。家族みんなでご飯を食べ終えて、部屋の明かりを少し落とし、ちゃぶ台の上にはまだ温かいお茶があった。テレビから流れる波の音と、ナレーターの少し低い声が、子どもだった私の心を妙にざわつかせた。
青い海の上を飛ぶ飛行機が突然レーダーから消えたり、コンパスがぐるぐる回ったり。CGの海がテレビ画面いっぱいに映し出されて、その不思議な現象を「科学では説明できない」と語る声。子どもながらに「海の底に何かあるのかな」と思った。その夜、布団に入っても少しドキドキして、世界って広いんだなぁ、とぼんやり感じていた。
大人になった今でも、あの“説明できない”という響きには、どこか惹かれてしまう。きっと、理由がわからないことに人は弱い。でも、その「わからなさ」が、世界を少しだけロマンチックに見せてくれるような気もする。
今の時代なら、スマホで検索すればすぐに答えが出てくる。実際、バミューダトライアングルの謎も、いろんな仮説でだいたい説明がつくみたいだ。でも、それを知ってもなお、私はあの夜の「ちょっと怖いけど、どこか夢みたい」な気分を忘れられない。
きっと、あのとき感じた“不思議”は、答えを求めるよりも、ただ感じていたい気持ちだったんだろう。知らないことがある世界のほうが、少し楽しい。
今でも海を眺めると、あの番組の映像をふと思い出すことがある。どこまでも続く青の向こうに、見えない三角形が広がっているような気がして――。その瞬間、子どものころの私が、また少し顔を出す。



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