お好み焼きとあの日の憧れ

日記

初めてお好み焼きを見たとき、衝撃だった。

鉄板の上で、キャベツと生地がじゅうじゅうと音を立てて、いい匂いが部屋いっぱいに広がっていた。「すごい…こんなの家で作れるんだ」そう思いながら、友達の家のリビングでわくわくしつつ座っていたのを、今でも覚えている。

いざ自分の番がまわってくると、最大の難関は“ひっくり返す”瞬間。見よう見まねでヘラを手に取るものの、タイミングも力加減もわからない。思いきってえいっと返したら、半分が鉄板の外へ……。そのたびにみんなで笑いながら、「どんまい!」と声をかけてくれた。その横で、友達がきれいにお好み焼きをくるっと返す姿が、やけにかっこよく見えた。

あの一瞬の動きに、なぜか憧れた。

それから何年も経つけれど、実は今でもお好み焼きをうまくひっくり返せない。家で焼くときも、毎回少し緊張してしまう。「今日こそは…」と意気込むものの、結局ちょっと崩れてしまって、「まぁ、味は一緒だからいいか」と笑ってごまかすのが恒例だ。

でも、不思議と嫌な気持ちはしない。生地が鉄板に当たって焼ける音、ソースが焦げる甘い香り、マヨネーズをぐるぐるとかける瞬間――。お好み焼きには、そんな小さな幸せが詰まっている気がする。少し焦げても、形がいびつでも、みんなで囲む食卓は楽しい。

あのとき、友達が笑いながら教えてくれた「返すコツ」は、まだ身についていないけれど、“ひっくり返せなくても楽しい”ということだけは、ちゃんと覚えている。次こそはうまくいくかな…なんて思いながら、またヘラを手に取る。じゅうっと音を立てて、今日もお好み焼きのいい匂いが、部屋いっぱいに広がっていく。

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