通学電車

日記

久しぶりに地元へ帰った日のこと。

駅のホームに立つと、見慣れたあの電車がゆっくりと入ってきた。相変わらず、2両だけの小さな電車。昔は4両だったような気がするけれど、いつの間にか短くなっていた。小さくなった姿を見て、なんだか懐かしい友達に再会したような気持ちになった。

この電車、昔は山手線で走っていた車両を使っている――

そんな話を大人になってから聞いた。確かに、丸みのある銀色の車体も、少し古めかしい座席の模様も、どこか「都会の風」をまとっていた。だけどこの町を走るようになってからは、すっかり地元の色に染まって、ゆっくりと景色を運ぶ“あたたかい電車”になった。

中学・高校の3年間、毎日のようにこの電車に乗って通学していた。朝は眠そうな顔の学生たちでいっぱいで、放課後は部活帰りの汗のにおいと笑い声が混じっていた。冬の夕方、ストーブのようにぽかぽかと温かい車内でうとうとしたり、車窓に映るオレンジ色の夕日をぼんやり眺めたり。あの時間は、今思うととても穏やかで、心が落ち着くひとときだった。

今はもう、この電車に乗ることもほとんどなくなった。でも、ホームでその音を聞くと、不思議と心が安らぐ。ドアの閉まる音も、レールのきしむ音も、あの頃とまったく変わっていない。

都会の電車みたいに速くも、便利でもない。

けれど、地元の景色と一緒に、私の中の“あの頃”を今も運び続けてくれている気がする。2両だけの電車に、ぎゅっと詰まった思い出たち。変わらないものがあるって、なんだか嬉しいな。

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