アヤメ

日記

朝の散歩道、ふと道端に咲いている花に目がとまった。背筋をぴんと伸ばしたような姿。すらりと伸びた茎の先に、深い紫の花びら。あ、アヤメだ。風に揺れるその姿がなんともかっこよくて、思わず立ち止まってしまった。

アヤメの花って、どこか気高い雰囲気がある。派手すぎず、でもしっかりと存在感があって、静かな強さを感じる。紫色の花びらには、青でも赤でもない絶妙な深みがあって、朝の光を受けると少し青みがかって見えるところがまた美しい。

昔から紫という色には、どこか惹かれてきた。落ち着いていて上品なのに、少しだけミステリアスで。アヤメの花が咲く季節になると、その紫を見るたびに心がしゃんとする。「今日も頑張ろう」と言われているような気がするのだ。

風が吹くたびに、花びらが軽く揺れて、そのたびに朝の空気がふわっと香る。近くを通る人たちも、みんな一度は足を止めて見ているようだった。アヤメの花って、誰に見せるでもなく、ただ静かにその場に咲いている。それがまたかっこいい。

少し前までは、花といえば“かわいい”という印象が強かった。でも大人になるにつれて、“かっこいい花”というものがあることを知った。華やかじゃなくても、自分らしく咲いている花。アヤメの紫は、まさにそんな花の代表のように思える。

帰り道、もう一度振り返って見ると、朝より少し明るくなった陽ざしの中で、アヤメがきらりと光っていた。その姿に、なんだか背中を押された気がして、自然と笑みがこぼれる。

季節が移ろっても、この道を通るたびに、あの紫の花を探してしまうんだろうな。アヤメの花のように、自分も静かに、でも凛と立てる人でありたい。

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