歯医者さん、今も苦手です

日記

朝からなんとなく落ち着かない。そう、今日は歯医者さんの日。しかも「抜歯」だ。子どものころからずっと苦手で、あの独特の音や匂いを思い出すだけで、体が少しこわばってしまう。大人になった今でも、できることなら行きたくない場所のひとつだ。

待合室の時計の音がやけに大きく聞こえる。雑誌をめくっても、頭の中は“あの椅子”のことばかり。診察室のドアが「どうぞ」と開いた瞬間、心の中で小さく覚悟を決める。白いライトの下、歯科医の先生のやさしい声が「力を抜いてくださいね」と響く。そう言われても、抜けないのが現実である。

「麻酔しますね」と言われて、ちょっとドキドキ。ピリッとした感覚に肩がすくむ。でも、思っていたより痛くない。「はい、抜けましたよ」と言われたときは、まるで長い戦いを終えたような安堵が押し寄せてきた。

帰り道、少し頬を押さえながら歩く。冷たい風が気持ちいい。あの緊張感から解放されたせいか、空がやけに青く見える。スーパーの前を通りながら「今日は柔らかいものにしよう」と心に決め、おかゆとプリンを買って帰った。

家に帰って鏡を見ると、ちょっと腫れた頬がなんだか情けなくて笑ってしまう。昔、子どものころに抜歯したとき、お母さんが「よく頑張ったね」とアイスをくれたことを思い出した。あのときも怖かったけれど、ちゃんと乗り越えられたんだっけ。

今も正直、歯医者は苦手。あの椅子に座るたびに心拍数は上がるし、できるなら行きたくない。でも、終わってしまえば「意外と大丈夫だったかも」と思う自分もいる。きっと、怖さと安心がいつもセットになってるんだろうな。

今日もひとつ、小さな“苦手”を乗り越えた気がする。それだけで少し、心が軽くなった。

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